わたしは、長く働き続けるために、
自由な選択ができる起業の道を選びました。
一方で、働くことが好きなのに、「やり方」や「人」に縛られて、
起業で不自由になっている人もいます。
本来起業は、自由な発想で仕事ができる場です。
自由な発想で仕事をして、お客様に感謝され、しっかりお金を稼げれば、
働くこと、お客様、そしてお金への感謝が生まれます。
そんな起業スタイルが広まって、
感謝があふれる世の中になることを望んでいます。
「学校に行きたくない……」
小学一年生になったばかりの長男が、ある朝、ぽつりと言いました。
会社勤めをしていた頃のことです。
毎日、楽しそうに通っていて、何の問題もないと思っていたわたしにとって、それは、晴天の霹靂の出来事でした。
「朝、学校の門の前でアリと遊んで、なかなか教室に入らないんですよ」
学校に電話をすると、先生から耳を疑うような話を聞きました。
(いったい、お兄ちゃんに何が起こっているのだろう)
仕事で終電で帰る日々のなか、ゆっくり息子の話を聞く時間がなく、どんな生活を送っているかも知らずにいました。
「あなた、それでいいの?」
わたしの代わりに子どもたちの面倒を見てくれていた母のひと言に、わたしは思います。
それでは、ダメだよね。今は、そばにいてあげなければ。
そして、17年かけてキャリアを積んできた不動産会社を辞める決心をしました。
初めての専業主婦生活を送るなかで、経験したことのないママ友との付き合いに、だんだんと負担を感じるようになっていきました。
「このままではいけない」と、自分の時間を持つためにパートを始めます。
しかし先輩のいじめにあい、長く働き続けることができませんでした。
次に勤めた会社は、働きやすい職場でしたが、勤めてまもなく廃業してしまいます。
わたしは気づきました。
どこかに勤めていては、家族や会社や様々な問題で、働きたくても仕事を続けられなくなる。
「長く働き続けるには、自分で起業するしかない」
そして、起業の道を選んだのです。
起業することへの違和感
趣味だったカメラで起業しますが、「セールスが強みだ」とコンサルタントから指摘され、営業セミナーを作り販売したり、講師を招致してセミナーを主催するなど、強みをとことん活かした仕事を始めるようになります。
強みを使うと、負担なく売り上げられるようになり、起業の面白さをどんどん実感するようになりました。
その後、起業コンサル業を始め、お客様にも強みを活かした自分らしい働き方を提案するようになります。
しかしその数年後、自分らしさを大切にした起業の形に、少しずつ違和感を感じるようになりました。
「起業って、なんて嫌な世界なんだろう」
わたしにたくさんの喜びと感動を与えてくれた起業の世界でしたが、仕事の責任よりも、自由を優先する人たちが目につくようになりました。
依頼した商品を納品しない人。
お客様のクレームに対応せず、非難ばかりする人。
仕事の質をあげる努力をしない人。
仕事の責任を放棄した「自由」を主張するのが、起業なのだろうか。
そんな起業の世界に居心地の悪さを覚えました。
自分のやり方を自由に選択したいなら、その責任を果たすこと。
これは、たった1人で事業を興した父の姿から学んだことです。
会社勤めが性に合わず起業した父は、自由な働き方を手に入れた一方で、仕事にまつわる大きな責任を負っていました。
どんなことが起きても責任をまっとうする父を日常的に目にしていたことで、
仕事で責任を果たすことの大切さを、子どものころから感じていました。
大学卒業後、不動産会社の営業部に入社。
仕事で大切なことを知っていたからこそ、着実に成績をあげていくことができました。
しかし責任をまっとうするわたしの姿は、ほかの社員の目には、会社のルールにハマらない異端児に映ったかもしれません。
営業所で先輩や同僚たちがおしゃべりをしている間、ひとりでチラシの投げ込みにでかけました。
チラシの投げこみは、みんなで担当者を決めてから行うのが暗黙の了解でした。
しかし、そんなルールに合わせていたら、営業のタイミングを逃し、売上に繋がりません。
女の先輩から、嫌味を言われることや売上を横取りされることもありました。それでもわたしはめげませんでした。
わたしが会社に果たすべき責任は、マニュアルを守ることではなく、契約をとることだったからです。
そうして責任を果たし続けたことで、周りの人が何も言わなくなり、自由なやり方で仕事ができるようになっていきます。
大学を卒業したばかりの新人研修を任されたことが、
現在の起業コンサルに活かされています。
新人研修で、彼らが行動できるようになるには、どんな声掛けや研修が必要かを、
とことん検証しました。
契約を取るためには、行動しないと始まらないからです。
父親と口をきかないと話す新人には、家で両親の悩みを聞き、
レポートにまとめる課題を出しました。
コーヒーしか飲まないという新人には、緑茶の淹れ方を指導しました。
様々なお客様の対応を想定し、たくさんのロールプレイングを重ねました。
新人研修でたくさんの検証を重ねたことで、人が行動できない原因を突き止め、
どうしたら行動できるようになるのかがわかるようになりました。
「もう、起業をやめよう」
2021年の春。5年続けてきた起業をやめることを考え、新規の申込みをストップしました。
「会社勤めはできない、けれど働きたい」と起業した人たちが、様々な起業スタイルに翻弄され、
“人の役に立ち、お金をいただく”というシンプルなことを忘れているように見えました。
お客様よりも自分を大切にする仕事のしかたが起業であるのなら、こんな世界で仕事をしたくない。
起業をやめることを決意してからは、仕事のために揃えたオシャレな服はクローゼットに眠ったまま。
ミッキーのトレーナーとジーパン姿でスーパーに買い出しにいく。昼寝をして、たぬきうどんを食べて、また昼寝。
しかし、そんな日々を送るなかで、あらためて気づきます。
「わたし、働くことが好きなんだ。仕事が楽しいんだ」
仕事の責任について知らない人が多いのなら、わたしが教えよう。
起業の面白さを感じられる、自由な発想で仕事を組み立て、売上げる方法を伝えよう。
働くことに感謝できる人を育てよう。
そして、「人の役に立ち、お金をいただく」というシンプルな考え方から、
起業の基本を学べるスクールを立ち上げることを決めると、胸が高鳴りました。
素晴らしさを伝えたい
起業は、わたしに働くことの素晴らしさを実感させてくれました。
しかし、起業に自由ばかりを求めると、起業の面白さや、
働くことの素晴らしさを知ることができません。
起業スクールで目指すのは、仕事の責任を果たしながら、自由に働くこと。
自由と責任が共存した起業ができて、
はじめて、お客様に感謝し、感謝される働き方ができるからです。
感謝が循環する起業を通して、働くことの素晴らしさを伝えていきたいのです。